マスク君曰く

 

「俺たちはよー、ひっそり生きるのが信条なんだっつうの。ウイルス君とは友好関係ではあるけどな。いつも俺たちを行き来しているからな。ウイルス君が脚光を浴びちゃうと俺らまでも注目されちゃうわけだ。迷惑な話よ。昔はよ、誰にも注目されることなくひっそりと生きてきたんだ。そりゃ、中には必要としちゃう人もいるのよ。病院関係や理美容関係。あとは芸能関係とかな。でもよ。普段は平和なもんよ。誰にも注目されずにひっそり生きてたからな。売れちゃったら最後、おしまいなのよ。なんでかって?あのバイキンだらけの口に当てられて唾は飛ぶわ口臭は臭いわで、挙げ句の果てにゴミと一緒に処分されるんだぜ。親兄弟との別れの挨拶もできずに旅立つ気持ちも察してくれよ。清潔モットーな俺たちは大事に扱われて幸せな日々を過ごしていたわけよ。ただ、今回のウイルス君のせいで、ひっそりしていられなくなったわけ。迷惑な話だぜ。店頭に並んでいてもオチオチ安心していられやしないぜ。買われたら覚悟を決めなきゃならんのよ。あのバッタもんのマスク連中ときたら、税金でひっそり暮らしていたらしいじゃねえか。ま、最近放出されるみたいだけどな。しかも産着に昇格するとか。でもいいよなあ。産着になれるから。俺らなんてバイキンまみれになってお陀仏するんだぜ。アベノなんちゃらマスクが羨ましいよ。ガーゼマスクって言えば昔は洗って使い回しされていたほど重宝されてたサラブレットだもんなあ。それに比べて俺たちゃ得体の知れない薬品に汚染された新参者だもんなあ。ま、愚痴を言ってもわかっちゃもらえないだろうから、この辺にしておくよ。しかし、ウイルス君は今も俺たちを通過して行き来して自由なのに、俺たちは移動できないからどうしようもないな。売れ残りを夢見て店内の電気が消えるのを待ちます。あばよ。」